議決権なき株式
平成14年の商法の改正で、「議決権制限株式」という株式の発行が認められるようになりました。
この株式には、①議決権を行使できない株式と②決議事項の一部に限り議決権を行使できる株式の2種類があります。生前にこのような株式を発行しておき、遺言により、後継者以外の相続人にこのような議決権制限株式を相続させるという方法をとることも考えられます。
他の相続人に議決権のない株式を取得させておけば、この株主は株主総会において議決権を行使できませんので、後継者は株主総会で議決の多数をとることができるのです。
黄金株
これは、株主総会において、一定の事柄について拒否権を行使することのできる株式(黄金株)のことです。
事業譲渡や重要な資産の譲渡など会社の方針を決定するような重大な事項について、その特殊な株式を保有する株主の賛成が得られなければその議事を承認することができないという内容の株式を発行しておきます。当該株式を贈与や遺言などの方法により後継者に取得させることによって、他の相続人が株式を取得しこれを第三者に譲渡した場合でも、後継者がイニシアティブをとって会社の経営を行うことができるようにしておくことが可能となります。
また、相続が開始し、後継者以外の者に相続によって株式(ただし、譲渡制限のある株式に限られます)が取得された場合には、定款に定めがあれば、株主総会決議を経て、会社がその相続人に対して、取得株式を譲渡するよう請求(売渡請求)することができます。
したがって、株主総会の特別決議により定款を変更して、このような定めを設けておくことも一つの方法です。
ただ、後継者が相続によって取得した株式も、この売渡請求の対象となりますので、注意が必要です。売渡請求を受けた株主は、株主総会決議において議決権が行使できませんので、後継者が過半数の株式を有しているからといって安心はできません。慎重に検討したうえで対処してください。