① 生前贈与分について考える
上記の事例においては、父親が生前、次男Cに8000万円もの価値ある不動産を贈与していたため、妻Aの遺留分(3000万円)が約334万円、長男Bの遺留分(1500万円)が約167万円、それぞれ侵害されていました。
② A・Bの遺留分をどうやって回復するのか?考える
このような場合、遺留分を侵害されたA・Bは、どのようにしてその権利を回復するかという問題が今回のテーマです。
民法は、遺留分を侵害された者に対して「遺留分減殺請求権」という権利を認めています。
A・Bは、自分たちの遺留分を侵害した贈与や遺贈に対してこの権利を行使することによって、自分たちの遺留分を回復することができるのです。
具体的には、A・Bは、自分たちの遺留分が侵害されたのは、Cに対する8000万円相当の不動産の生前贈与によるものですので、Cに対して遺留分減殺請求をします。なお、この請求は、相続が開始したことと減殺されるべき贈与があったことを知ったときから1年以内で、相続開始時から10年以内にする必要がありますので、注意してください。
③ 遺留分減殺請求後の持分
そして、この遺留分減殺請求をすると、当然にその効果が生じますので、A・Bは、これによりCが贈与を受けた不動産について、侵害額相当の持分を取得することになります。すなわち、Aは、Cが贈与を受けた不動産について、334万円/8000万円 Bは、167万円/8000万円の持分を取得することになります。
もしも不動産ではなく現金の場合は?
仮にCに対する贈与が不動産ではなく現金であった場合には、この遺留分減殺請求をしますと、Cに対してAは334万円、Bは167万円をそれぞれ支払うよう請求することができることになります。
④ 共有物分割請求権を使う
ただ、AもBもCがもらった不動産について遺留分減殺をしても、上記のとおりに単に共有持分をもらうことになるだけなので、これだけでは金銭的な満足が得られません。
このような場合、民法は、不動産について共有持分を有している者に対して「共有物分割請求権」という請求権を認めていますので、A・Bはこれを行使することになります。
具体的には、A・Bは、Cに対して、Cが生前贈与を受けた土地について、これをA・Bの持分(Aは334/8000、Bは、167/8000)に応じて分割するように請求します。