遺言方式による具体的場面での違い
1. 保管
自筆証書遺言については、作成した遺言書を遺言者が保管しておかなければいけませんので、盗難や紛失のおそれがありますし、だれかに内容を書き替えられてしまうおそれがあります。
他方、公正証書遺言は、その原本が公証人役場に一定期間保管されていますので、そのような心配はありません。
2. 手続き
自筆証書遺言については、遺言者が亡くなられた後、これを裁判所に提出して「検認」を受けなければいけません(封筒に入って封印されているものは裁判所での「開封」という手続が必要です。なお、この開封・検認の手続きを怠ったとしても遺言の効力そのものには影響はありません)。
他方、公正証書遺言の場合はこの手続は必要ありませんので、この点で簡便だといえます。
3. トラブル
自筆証書遺言の場合、相続が開始された後、遺言書の筆跡が遺言者のものとは違うといったトラブルが生じることがありますが、公正証書遺言の場合には、公証人が遺言者の本人確認をしてくれますので、このようなトラブルが生じるおそれは少ないです。
4. 「公正証書遺言」がベター
このような点からしますと、遺言は、公正証書遺言という方式にしておいた方がベターです。
また、最近は、相続開始後に、相続人の一人から、遺言書作成当時に遺言者が認知症を患っていて遺言をする能力を失っていたから遺言は無効ではないかといった主張がなされるケースが増えております。このような場合でも、公正証書遺言では上述したように公証人や証人が遺言当時の遺言者の判断能力を現認しておりますので、そのようなトラブルになることも少なくなります。
ただ、公正証書遺言を作成してもらうときには、公証人に手数料を支払う必要がありますのでご注意ください。この手数料の額は、遺産の額によって異なりますが、たとえば遺産の額が5000万円の場合には5万円ほどです(詳しくは公証人役場にお尋ねください)。