交通事故に遭われた方

請求できる賠償の範囲

何が損害に含まれるの?

交通事故により、死亡またはケガをしてしまった場合や物が壊れてしまった場合、事故を起こした相手方に対して、被った肉体的・精神的・物的な被害を金銭的な評価に換えて、損害賠償を請求することができます。

この損害賠償請求をする場合の「損害」は、大きく次の二つに分けることができます。被害者の身体や精神に生じている損害(人的損害)と、物に生じている損害(物的損害)です。そして、その人的損害と物的損害が、それぞれさらに細かく分類されていくことになります。

「具体的にいくらの請求ができるのか」については、まず「どの損害が賠償範囲に含まれるのか」を特定した後に、問題となります。

もちろん、事故の状況についてはケースバイケースですので、一括りにできない場合も多々ありますが、以下、具体的な場面に分けて、一般的にいかなる損害が賠償範囲に含まれるのかを考えてみます(また、下記のどのケースにおいても、弁護士費用については損害の範囲に含まれます)。

死亡事故の場合

被害者が死亡してしまった場合、いかなる賠償を請求できるでしょうか。この場合、一般的には次の通りになります。

人的損害

逸失利益

被害者が生きていたならば得られたであろう利益(逸失利益)を請求することができます。これは、原則として、被害者の一年あたりの実際の収入を基礎にして、今後働けたであろう期間(就労可能年数)で得られる総収入を算出します。ここで注意しなければならないのは、「被害者が生きていた」と仮定する以上、収入だけでなく支出である生活費がかかってくるということです。そこで、上記のように算出された総収入から、生活費の割合を控除した金額を請求することとなります。
もちろん、一年あたりの収入は人によって異なりますので、算出される逸失利益の金額も人によって大きく変わってきます。

慰謝料

被害者が死亡した場合、加害者に対して慰謝料を請求することができます。死亡事故での慰謝料とは、被害者が死亡したことにより肉体的・精神的苦痛を被ったことに対する賠償です。ですので、法理論的には、遺族の方が精神的な苦痛を被ったことについての慰謝料と、亡くなったご本人が亡くなられる瞬間に被った肉体的・精神的苦痛についての慰謝料(これをご遺族が承継することになる)との二つの慰謝料が請求できることになります。

葬儀費用

また、死亡事故の場合に特有のものとして、被害者の葬儀にかかった費用も損害の範囲に含まれます。ただし、香典返し、弔問客接待費などは認められません。

死亡に至るまでの治療費、入院費、付添看護費

事故にあった後、病院での治療を行っていたにもかかわらず亡くなってしまった場合には、その治療費や入院費も損害賠償の範囲に含まれます。また、遺族の方が付添看護をされていたような場合、付添の必要性が認められれば、その付添看護費用についても損害といえるでしょう。

物的損害

物的損害については、下記の「物損の場合」と同様になります。

後遺障害が残った場合

では、被害者に後遺障害が残ってしまった場合には、いかなる損害賠償を請求できるのでしょうか。
ここでいう後遺障害とは、交通事故が原因の機能障害や神経症状のうち、治療完了後(症状固定後)まで残ってしまったものを指します。一般的には、さらに労働能力の低下・喪失と、後遺障害等級に該当することが必要とされています。

人的損害

逸失利益

後遺障害が残ってしまったというためには、上記のとおり労働能力の低下が認められなければなりません。そこで、この場合には、労働能力の低下を伴う後遺障害がなければ得られたであろう利益(逸失利益)を請求することができます。
この場合も、実際の収入・労働力の低下はあれど今後働ける期間(労働能力喪失期間といいます)を基礎として逸失利益の額を算定しますので、死亡事故の場合と同様にその金額は人によって大きく異なります。

慰謝料

慰謝料についても、賠償の範囲に含まれます。
後遺障害が残った場合の慰謝料については、後遺障害等級によって大まかな金額が決まることになります。この等級は、障害の部位や程度によって決まります。
また、重度の後遺障害が認められる場合は、死亡事故と同様に遺族固有の慰謝料が認められることもあります。

治療費、入院費、付添看護費

死亡事故の場合と同様に、必要かつ相当な範囲で認められます。付添看護費についても同様です。

休業損害

休業損害については、下記のケガをした場合と同様です。

物的損害

物的損害については、下記の「物損の場合」と同様になります。

ケガをした場合

では、ケガをしてしまった場合は、いかなるものが損害の範囲に含まれるでしょうか。

人的損害

休業損害

ケガをした場合に特徴的なのは、休業損害を請求できる点です。休業損害とは、交通事故のケガの治療のために休業することになり、その休業から生じる損害のことをいいます。
この休業損害は、会社員・自営業者・無職者・学生などの立場によって、何を基準に算定するのかが変わってきます。例えば、会社員であれば事故前の現実の給与額を基礎とし、自営業者であれば事故前年の確定申告所得を基礎として算出します。

逸失利益

後遺障害のないケガの場合、逸失利益は一般的にはないと考えられます。

慰謝料

ケガの場合にも慰謝料は認められます。入院期間や通院期間を基礎として、ケガの軽重も基準として決定します。また、被害者個別の特別事情が考慮されることもあります(入院により留年となった等)。

治療費、入院費、付添看護費

死亡事故の場合と同様に、必要かつ相当な範囲で認められます。付添看護費についても同様です。

物的損害

物的損害については、下記の「物損の場合」と同様になります。

物損の場合

車や自転車が壊れただけで、誰もケガをしていない場合はどうなるでしょうか。

人的損害

原則として、人的損害はありません。ただ、例外的に、慰謝料が認められる場合もあります。
EX. 亡くなった親の形見だった車が全壊してしまった場合など

物的損害

修理費

まず、交通事故で車が壊れてしまった場合、修理費が損害に含まれます。ただ、修理費が損害に含まれるといっても、修理費全額について無条件に含まれるわけではありません。例えば、一般的には一部のみの修理・塗装で済むといえる場合には、「色むらができる」等の理由で全塗装をしても、その費用全額を損害に含めることはできず、相当な範囲の修理費のみが損害として認められます。
また、直接の事故車両のみでなく、事故により故障したと言い得る所持品、例えば事故当時持っていて事故で壊れてしまった携帯電話等の修理費用も、損害の範囲に含まれます。

代車費

また、車を修理に出している時に借りる代車費用についても、損害に含まれます。ただ、もちろん無制限に認められるものではなく、必要と認められる範囲で損害となります。